小説を書きたいけど、どこから手をつけたら良いか、わからない人。
もちろん、私のそのうちの一人でした。
その方法を説明した本はたくさん出版されていて、多くの著者が、それぞれの立場から有益な方法を教えてくれています。本当にたくさんの本があります。
その勉強をするだけで、小説を書く暇なんてありません。
このジレンマ! なんとかならないのでしょうか?
また、本を書きたいと思っているが、そもそもタイピングが苦手な人。
タイピングは速くできるに越したことはありません。タイピングが速ければ、小説のアイデアを実際に文章に書くのがものすごく楽に、素早く書けます。
しかも出版サイクルも上げていくことができ、結果として、知名度や収入にも良い影響を及ぼします。
これがいわゆる多作によるメリットです。
ゆっくり書いていては、いつまで経っても小説は完成しません。
例えば小説として最低限と言われている十万文字を書こうとした場合、1日あたり1,000文字しか書けなかったら、三ヶ月近くかかります。それから推敲して、校正してとなると、さらに時間がかかり、多作は望めません。
このようなことから、小説を書くためにしなければならないことは、大きく分けて次の段階があると言えます。
第1段階……世界を創る(頭の中)
第2段階……世界を書く(頭の外)
実は、この『タイピング神』という本は、タッチ・タイピングの教則本を作ろうとしたところからスタートしました。
つまり、実用書を作ろうと考えていたのです。上記の例でいうところの《第2段階……世界を書く(頭の外)》の部分ですね。
だけど、ただ単に無味乾燥な教則本では面白くないと思い、先生と生徒に登場してもらって、楽しい感じで物語ふうに書こうかと思い至り、実際、書いてみました。
そして、一応完成したのですが、それでもなんだかちょっと物足りない気がし始めたのです。
“タイピング神”という神様が、主人公にタイピングを教える話で、《会社の仕事が速くこなせるようになって、よかったね!》で終わる、当初はそれだけの小さな幸せ物語でした。
でもそれだけではとどまりませんでした。
せっかく身につけたタッチ・タイピングという特技を活かして、主人公が何かできないかと考えたのです。
そうしたら、ウダツの上がらないダメなサラリーマンの人生逆転物語だったら面白いかも? などと浮かんできてしまいました。で、どうしようかと思いましたが、それも含め、全て書いてしまおうと思い、完成させてしまったのがこの作品です。
なので、この本は、次の様な方に読んでいただければと思います。
・タッチ・タイピングをマスターし、キーボードを見なくても凄いスピードでタイピングができる様になりたい方。
・タイピングは一応できるが、スピードが遅いので、これを機に、基本をしっかり短時間で押さえ、一気にスピードを上げたい方。
・タッチ・タイピングができるようになると、人生がどんな感じで開けるのか、その可能性を知りたい方。
・印税収入が得られる作家を目指したいと思っているが、具体的にどの様に展開していくのか、イメージをあらかじめ掴んでおきたい方。
この本を書くにあたって、多くの小説の書き方の指南本もリサーチしました。
その中で、様々な方法を取捨選択し、実効性の高い次の内容も、盛り込んであります。
・どのようにして物語のアイデアを作り出したらよいのか?
・アイデアをどの様に育てたらよいのか?
・小説の構成はどうしたらよいのか?
・執筆に使う道具選びで陥りがちな罠とは?
この辺りは、上記の段階で区分するところの、《第1段階……世界を作る(頭の中)》ですね。
これらを誰でも取り組めるようにできるだけシンプルな方式に集約しました。
もちろん、細かい技法は星の数ほどあります。それを全てマスターしてから小説を書こうと思っても、準備ができた頃に人生が終わっている……ということになりかねません。
では、いつ書き始めたら良いのか? それはなるべく早く。
なるべく早くとはいつのことでしょうか?
それは最低限の準備が整ってから。
この《最低限》のエッセンスが本書に記されています。
最低限の準備を携えて、執筆の大航海に繰り出すのも良し、長年、じっくりと時間をかけて完全に準備を整えてから出発しても良し。それはあなたの選択次第なのです。
どちらが正しいとか、間違っているとか、そういう答えなんかありません。
ただ、私は前者の方が《生きている!》という強烈な感覚を覚えましたので、その道を選んでしまいました。
この本は次の様な構成になっています。
第一章 倒産
第二章 暗雲
第三章 挑戦
第四章 飛翔
タイピング神の練習帳(巻末付録)
とりあえず、タッチ・タイピングだけマスターしたい方は、巻末付録の《タイピング神の練習帳》のみ、お読みください。
タッチ・タイピングを30日でマスターしていただけたら幸いです。本気で練習したらものすごい速さで打てるようになります。
このように言えるのにもじつは、根拠があります。私は、もともと高校教師をしていた時期があり、文書処理という科目でタッチ・タイピングも教えていたのですが、なんと教え子たち全員が、この本に書かれた方法でマスターすることができたのです。《全員が》です! なので、これからマスターしたいと思われた方にも、きっとお役に立てる内容かと思います。
さらに良いことに、人生で一度、タッチ・タイピングをマスターしたら、一生使えますから、その後の人生が、バージョンアップすること間違いなしです。
ちなみに、タッチ・タイピングができる人の割合は、社会人だと、その三割程度と言われています。さらにその中でも速く打てる人の割合はというと、もっと低くなってしまうでしょう。
マスターした技能をどのように活かすかはあなた次第です。作家として活かすにはどうしたら良いかも含め、この小説をお楽しみいただき、お役立ていただけましたら、本書を著した者として望外の幸せです。
この文章をお読みのあなたに、幸多かりしことを祈っております!
『タイピング神——タッチ・タイピングを30日でマスターし、本を書こう!』
著者:五木元(いつきげん)ペンネーム